担保権の実行による回収
担保権を実行して債権を回収する場合、「強制執行による担保権の実行」「私的実行による担保権の実行」の2通りの方法があります。
- 強制執行による担保権の実行
- 裁判所が強制的に換金手続きを行なうもの
- 私的実行による担保権の実行
- 裁判所が強制的に換金手続きを行なうもの
裁判の判決を受けて強制執行がなされる場合の運用に加え、裁判前に相手方に任意売却してもらい、そこで得た金銭によって債権を回収する「私的実行」とよばれる運用がなされています。
したがって、必ずしも強制執行の手続きをとる必要はありません。
【担保権を実行するには、下記の要件が必要です。】
担保権の実行による回収の手続き
- 1、担保権の存在と証明文書の提出
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有効な抵当権、根抵当権が存在しなければなりません。
これを証明するために、抵当権の存在を証明する法定文書の提出が要求されます。
(例:確定判決・公正証書の謄本・担保権の登記されている登記簿の謄本等)
- 2、執行の申し立て
- 次に、管轄の簡易裁判所の書記官に少額訴訟債権執行の申し立てを行います。
通常の強制執行とは違い、強制執行してもよいという証明(執行文の付与といいます)をもらう必要はありません。
- 3、被担保債権の存在と履行遅滞
- 抵当権によって担保されている債権が存在している必要があります。
ここがポイント!
裁判による執行手続きとは違い、判決などの債務名義が不要なので、手続きが楽に進められるメリットがあります。
私的実行
他には私的実行という方法もあります。
裁判前に相手方に任意で財産を売却をしてもらい、そこから得た金額で弁済してもらうことも行われています。
先に述べた担保権の実行は裁判の判決による行動であるので最終手段と言え、次に述べた私的実行も「お金が無くて支払いが出来ないのなら担保に設定しているものを売って、そのお金で返して下さい」と半ば強制的な話を債務者に持ちかけるものですが、断ればその後に訴訟と強制執行が待っているという事を暗示しているものであり、強行的な手段と言えるでしょう。
ここに注意!
この手段を行使できるのは契約時に担保を設定している債権だけなので、契約書の内容を再度確認し、担保設定していれば法務局で内容を確認することも必要です(担保権は設定時に法務局に登記をしないと効力を有しません)。
担保の価値や売却による金額回収のスピードと確実性も確認したうえで担保権の実行を考えるのが良いですが、あいまいに進めていては債権の回収額に大きな違いが出る可能性があるため、専門家のアドバイスによる対策も必要になるでしょう。